★仕舞【しまい】  能の演奏形式の1つで、能一曲の中の見せどころを、地謡によって舞う。通常、舞い手は、面・装束をつけず紋服姿または裃姿で、仕舞扇だけで舞う。地謡は通常四人並ぶ。

★鶴【ぬえ】  源頼政に退治された鵺の霊が旅の僧に弔いを頼み、そのときのありさまを物語る。鵺は頭は猿、尾は蛇、胴は狸、手足は虎の妖怪。頼政は功により鳥羽院から近衛天皇に伝わった号 獅子王の太刀を賜る。獅子王は頼政の子孫の但馬国竹田城城主斎村政広へと受け継がれたが関ヶ原の戦い後、政広は切腹を命じられ、獅子王は家康に没収された。その後、獅子王は家康から頼政の子孫とされる土岐頼次へと与えられた。土岐家に代々伝えられた獅子王は、明治時代皇室へと献上され、現在は東京国立博物館所蔵(重要文化財)となっている。

★山姥【やまんば】  善光寺詣での山中で山姥の曲舞によって名をあげた遊女、百万山姥の前に鬼女姿の真の山姥が現れ、人間の輪廻の相を示す山巡りの曲舞を舞い、山奥へと去って行く。

★能【はんのう】  能の演奏形式の1つで二場物の能の前場を省いて後場を演ずる形式。ただし前場もワキ登場の小段だけは演ずる。

橋弁慶【はしべんけい】   武蔵坊弁慶は、願を懸けて毎夜五条天神へ参拝を欠かさなかった。その満願の日、弁慶が行こうとすると、従者が、五条橋には不思議な早業で人を斬って廻る少年が出るから行かない様に勧めると、弁慶は噂に怖れては無念であると五条へ出かける。少年は牛若丸で、今夜は寺へ戻る前の名残にと、五条橋で月を眺めていた。そこへ弁慶が来たので、牛若は弁慶を挑発する。弁慶は牛若と戦うが破れ、二人は主従の契りを結ぶ。

★子方(こかた)  能の役種。少年(通常、変声期以前)の役者が扮する役で、実際に年少者である場合と成人の役を少年が演ずる場合とがある。後者は能独特の演出法で貴人の品位の表現を意図すると想定される。面は付けない。

★シテ(して)  能・狂言の役種で一曲の主役のこと。能にはツレの無い曲は多く、ワキの無い曲もあるが、シテが無い曲はない。前後二場から成る能は前シテ・後シテと呼び分け、前シテと後シテが同一人物である場合と前シテが現実の人間で後シテが鬼や霊というように別人物である場合がある。どの場合も一人の演者が扮装を替えるだけで通して演ずる。

★トモ(とも)  能の役種。ツレの1種で、シテやツレの従者を言う。トモの出る能は7曲のみで「橋弁慶」はその1つである。

粟田口【あわたぐち】  狂言の曲目で大名狂言に分類される。大名(シテ)が、大名同士の道具比べに粟田口を比べることになり、粟田口が何かを知らないまま、粟田口を買いに太郎冠者を都へやる。都へは着くが、粟田口とは何でどこで売っているかも知らない冠者が、「粟田口買はう……」と呼び歩いていると、都のすっぱ (詐欺師)が自分こそ都の東、粟田口生まれの粟田口だと名のり、売ることにして同道する。大名は粟田口が人間と聞いて驚くが、すっぱの巧みな受け答えに感心し、道具比べに連れていく。さてその結末は……。
★粟田口  京都三条東山付近の地名。京都が遷都された際に東海道に繋がる京都の東口で遷都以前から粟田氏の所領で、その氏神の粟田神社がある。京都七口の一つで、時代、時代に関所が設けられたこともある。9世紀頃から鍛冶師が住みつき、鎌倉時代には鍛冶師の粟田口派を形成するに至った

★アド(あど)  狂言の役種。シテ以外の役の総称。アドが二人以上出る場合、和泉流では一人をアド、その他はすべて小アドと呼んでいる。

藤右馬允(とうまのじょう)・藤林(とうりん)  粟田口は、鎌倉時代に都の東、粟田口の地で作られた刀剣の総称で、鍛冶師の集団が総領筋の藤右馬允派と庶子筋の籐林派に分かれ、惣領筋が上とされていた。

みがふるい  ①粟田口の刀剣は刀身が古い物が多い②生まれてからこのかた、湯風呂に入らぬので古い

はのつよき  ①刀の刃が強い②歯が強くて岩岩石も噛み砕く

ばき  ①刀剣の刀身が鍔と接する部分にはめ込んで、刀身が鞘から抜けない様に締めておく金具。脛巾裳に似ていることからついた名前。②脛巾裳(はばきも)の略と言い、古代に布をすねに巻きつけ紐で結んで足を保護し動きやすくした物。後世の脚絆に相当する。

(めい)と姪(めい)  ①刀剣の柄の表側(身に着けた時の外側)に刀工の名を、裏側に製作年等をたがねで刻んだもの。二つ銘は表に主槌の刀工、裏に相槌の刀工の銘を入れたもの。②自分の兄弟・姉妹の生んだ女の子

★小鍛冶【こかじ】  能の曲目。一条天皇の勅により剣を打つことになった三条宗近は、氏神の稲荷明神に参る道で不思議な童子に出会う。童子は中国の故事やわが国の日本武尊の剣の威徳を示して勇気づけ、立ち去る。宗近は、壇を作り幣帛を捧げていると稲荷明神が現れ、相槌を打ち御剣を完成させる。稲荷明神は表の三条小鍛冶宗近の銘に加え、裏に子狐丸を入れ、稲荷の峰に帰っていく。

★ワキ(わき)  能の役種。シテの相手役。役柄は朝臣、神職、僧侶など必ず男性の現在体で、面はつけない。夢幻能では、シテを観察しその演技を誘導する傍観者的な役が多いが、現在能ではシテと互角に対立する役も多く、又橋弁慶の様にワキが登場しない能もある。

★アイ、間狂言(あいきょうげん)  二場物の能で、前場と後場とをつなぐ場面を中入場或いは間場と言い、狂言方が前場の解説や後場に続く事柄等を演じる。語リ間、アシライ間、劇間に大別される。間狂言は能と狂言との重要な橋渡し。

★一条天皇  九世紀末から十世紀の天皇

★三条小鍛冶宗近  主に刀剣を打つ鍛冶師を小鍛冶と称する。鉄鉱石や砂鉄から鉄を作る鍛冶師は大鍛冶と称する。宗近は東山三条に住み、京七口の一つである粟田口の近くである。

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